【野洲高サッカー部】FULL STOP BUT WE WILL ROCK YOU!!
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普通ならロングフィードするハズだが、ボランチの選手にグランダーでパスを出す。
前の観客からは、
「あそこから組み立てるのかよっ」
と驚きの声が出る。
野洲の平均身長は約170センチ、対する東福岡は176センチ。
ハイボール勝負になれば適わない。
単純な身長の差だけではない。
野洲の選手は比較的細い。
東福岡の選手はがっしりしている。
これはプレースタイルの差でもあるが、2年生が9人の野洲と3年生が10人の東福岡
の差でもある。
当たり負けしてしまうのだ。
パスとドリブルを中心とする野洲のサッカーにおいては宿命的なことかもしれない。
それでも彼らは戦ってきた。
そして勝ち上がってきた。
全国大会まで勝ち上がってきた。
「滋賀県立野洲高校サッカー部」
地名を冠した特徴のない名前だが、サッカーファンはこのチームに総天然色の想いを持つ。
「あのセクシーフットボールの野洲」
全国に駒を進め、テレビやスタジアムで、このチームの試合を観ることを楽しみにしているファンも多いだろう。事実、この試合、前の試合と、観客達は関東の人も多かった。
近くにいたおじさんが、嬉しそうに8番@潮入選手のプレーに驚く。
「あれが高校生サッカーかよっ」
混戦で、東福岡選手が倒れても、倒れることのない野洲のエースを絶賛する中学生。
「坂本、スゲー。倒れねぇ」
自分もサッカーをやっていると思われる高校生が、5番@内久保選手のプレーに舌を巻く。
「内久保ってスゲーな。キレてんじゃん」
7番@藤野選手のドリにあがる感嘆の声。
「あいつ速えーな」
そして何よりも観客を沸かせたのが、17番@横江選手のビックセーブの連発。
トイレで中座していた仲間に、ずっと観ていた中学生が教える。
「野洲のキーパーすげーよ。何回もスゴイプレーで止めてたぜ。まじキーパースゲーよ。」
野洲が一方的に攻めているわけではない。
むしろ攻めているのは東福岡だ。
野洲側のスタンドにいることもあるが、観客は野洲のプレーに驚き、関心する。
郊外の小さな町で毎日練習しているこのチーム。
まわりはのどかな田園風景。
近江富士と呼ばれる三上山を借景にした、国道と新幹線の線路の間に挟まれたグランド
で毎日練習しているこのチーム。
公立高校としては立派な人口芝のグランドだけど、他の私立強豪高に比べたらイジらし
いグランドだ。
試合がなくても近くをとおりかかると、思わず寄ってしまう。
小さな行畑の交差点をまがり、せまい道を抜け、新幹線の高架をくぐると見えるグランド。
いつも練習はゼッケンをつけた試合形式。
グレーのベンチコートをきて後ろに手を組み、選手を見守る山本監督。
小さく簡素な部室。
県大会ですら、応援団は相手チームのほうが多かった。
全国大会となればなお更だ。
それでも観客を沸かせるプレーを連発する選手たち。
3年生中心の相手チームに、怯むことも臆することも言い訳することもなく、自らのサッカー
を展開する選手たち。
能力の高い2年生が今回の敗戦で、さらなる決意をもってくれることを望みたい。
きっとやってくれるさ。
少ないながらも結束力の強い3年生を中心としたいいチームだった。
ベンチ入りした選手はもちろん、応援にまわった3年生も、3年生のマネージャーさんも。
あの3年生たちにして主力となった2年生は溌剌とプレーできたのだろう。
チームが負けてしまえば、即解散となる。
このメンバーの野洲はもう見納めとなってしまう。
もう3年生は自由登校の時期だ。
「ああ、いいチームを1年間観てきたんだな」
心からそう思った。
まったく部外者ながら、昨年の1月にニワカ野洲ファンになって、1年、本当に楽しかった。
どんどん成長する彼らを観るのが楽しかった。
グランドの外でも内でも自由で奔放で高校生らしい彼らを観るのが嬉しかった。
行畑のローソンでおいしそうに肉まんを食べている姿を見かけた。
ひとりだけエナメルバックをたくさんもって、あと3人は手ぶらで歩いている姿を見かけた。
風の強いなか髪形が崩れるのを気にしながら中主の田んぼの中を自転車で走っている
姿を見かけた。
8号線を夕方に通るとき、遠くに見える野洲Gに照明がついていると
「ああ、今日も自主練やっているな」
と嬉しくなった。
部外者ではあるが、「かちパン」をいただいたりもした。
部外者なのに山本監督に気軽にお声をかけていただいたりもした。
素敵な選手達に感謝したい。
素敵な選手達を支えておられる保護者・関係者のかたに感謝したい。
次の野洲が全国レベルでどれだけ強いのかは、わたしには殆どわからない。
でも、来年もやってくれるさ。
「悔しさ」を知った今年の2年生ならやってくれる。
是も非も理も非もなく、わたしは今年の野洲高サッカー部が大好きだ。
そして、是も非も理も非もなく、来年の野洲高サッカー部も応援したい。絶対。
でも、もう3年生たちの姿をみることができないと思うと、すごく寂しいなぁ。
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